いすみ学 出口商店

いつもお世話になっているkurosawa kawaratenさんの古民家改修を見学してきました。

今自分がやりたいことと重なるところが多く、今回のプロジェクトの背景なども踏まえまとめてみたいとおもいます。なお写真はあまりうまくとれなかったのでdesignboomさんの写真をご覧ください。苦笑

 

 

□大学と地域の連携

 

今回見学した施設は千葉大学が千葉県内の各地域に学生のために自由なアトリエ兼イベントスペースを用意したもの。現在は千葉県内に3つのこのようなハブがあります。なぜ大学がこのような施設をつくっているのかというと、地方大学の多くが似たような状況だと思うのですが、就職すると約9割の学生が東京を中心に千葉から離れてしまう、千葉に定着してくれないことに危機感を持ったとのこと。大学としては学生と千葉市だけでなく広く千葉県の各地域の人々や地元企業とつながり、プロジェクトやイベントを通して地元の方と交流、ゆくゆくは千葉県内で就職…という効果を狙っているといいます。

その狙いが身を結ぶかは時間が必要かもしれませんが、とても面白いと思います。人口が減っている街では商店もシャッターが閉まり寂しい景観となってますし、お年寄りだけだとどうしても、時間が停まってしまった街にみえてしまいます。そんな街に若者が来る、たとえ昼間人口が増えるだけとはいえ良いこと。地に足がついた活動で、街が活き活きして見えることがとても重要なことだと思います。

 

■古民家であること

 

この建物は明治44年(1911年)にできた建物で、もともとは日本酒の卸を営んでいたお店。つまり100年以上の時間を風説に耐え、そして地域の人々とかかわってきた建物です。千葉県内の土地勘は無いのでいすみの方が千葉大のある千葉市をどう意識しているかはわかりませんが、千葉市といすみは結構な距離があるので、地元の方にとってみれば、同じ県内とはいえ、千葉市はどこかよそもの感があるのではないでしょうか。ここで地域のためのスペースといっても、受け入れられにくい可能性があったと思います。今回のプロジェクトが新築でピカピカの建物よりもずっとここいすみにある物の方がなじみやすく、また自分の街を尊重してくれていると感じるのではないでしょうか。

通りがかりの市民の方も『ここ新しくなったのよ、素敵なところでしょ』と言ってました。

実際にこの空間を体験してみると古民家ならではの丸太の躯体や時間を感じる古材たちに包まれて、とても居心地がよいです。時間を経てきた建物というのはそれだけでパワーがあります。一部吹き抜けているので構造のダイナミックさも感じられます。また、桁側は引戸で全て開くことができ、視線が抜けるところも気持ちよいです。場所の魅力をうまく引き出しています。またオープンな空間は街に開かれているという意思表明でもありますね。

街にこんな施設があったら本当にいいだろうなという空間。

 

 

 

人口減少・移住

いすみ市もゆるやかに人口が減っているとのことで、このような施設があり、ここで様々なイベントがあると街に活気が出て移住を決断する人も出てくるのではないでしょうか。

最近空き家問題について考えることが多いのですが、人口が減る、ひいては空き家が増えるのはしょうがないと思います。色々な自治体が移住促進の取組にやっきですが、少ないパイを奪い合いしているようにしかみえず、この移住合戦の先に何があるのでしょうか。私としてはこんなキャンペーンをして予算を使うよりも、地域住民へのサービスを充実させる、地域に活気がでる、よその人がそれを感じ、住むと面白い

街かも...というストーリーの方がみんなにメリットがあると思います。

 

そもそもなぜ人がいなくなるかといえば、その街に産業が無くなったからですよね。産業と住宅がかつては結びついていた。それは夕張だって九州の炭鉱の街もそう。もちろん、木更津の様に川崎に吸い取られてしまうケースはあるが、今はアウトレットを中心にまた盛り上がろうとしている。

だから産業を起こせば人は戻ってくる。産業は仕事口でもあり、活気になります。その活気を生み出す時にこのような施設はとても有意義でさまざまな可能性があります。なぜなら地方には東京と違ってお店は少ないし、大きなイベントは少ないですがこういう施設は持ちやすい環境があります。むしろ大きいイベントではなく小さなイベントの集積こそが街づくりや活気をつくる、ひいてはこのイベントを通して産業が生まれる。

今回の『いすみがく』を見学して感じました。

 

 

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雑誌掲載のお知らせ

 

LiVES100号に私たちが設計した『光格子の家』が掲載されました。
私が独立して初めての掲載がLiVESさんで、しかも100号という節目というのも何かのご縁ですね。
本当にうれしいです。
 

快く協力頂いたお施主さん、そして編集部の池田さん、取材頂いたライターの松川さん、カメラマンの栗原さんにも感謝です。

お近くの書店でご覧いただけますと幸いです。

 

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第2篇 東勝寺橋

湘南古建築ガイドの第2篇として鎌倉の東勝寺橋を紹介します。本当ならばブログでもリサーチ記事をお伝えしているとおり、大船の常楽寺の予定でしたが、思いの外難航...時間がかかりそうなので、先に完成した東勝寺橋を繰り上げました。

 

橋をどう体験するか、橋だけでなく土木構造物一般に当てはまりますが、それは結構難しく理解するのに時間が掛かるかもしれません。

例えば、建築物は外だけでなく中に入ることが出来るので、外から中への一連の空間体験が可能です。しかし、橋は外しかなく、目的地へただ通り過ぎるだけのもの。そしてインフラという意識が強くどう見ればいいのかわからないのではないかと思います。

 

私は少しだけ土木のデザイン事務所に所属していたこともあり、橋の面白さや、空間の味わい方が分かりますが、初めは橋の空間って何?、橋に空間は無いよと考えたものです。このような土木に関心が向くと都市もより美しくなると思うのです。

今回は橋にスポットライトを当てることで、少しでもその魅力が伝われば嬉しいです。

 

 

なお、今回も前回の英勝寺と同様四つ折りで持ち運べることを考えてありますので鎌倉散策にご利用頂ければと思います。次回は、8月にお届けできればと考えています。

 

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出典::『鎌倉市景観重要建築物等指定報告書』(鎌倉市

大磯

 

学生の頃、大磯ロングビーチにアルバイトに来て以来、久しぶりに散策に来ました。

湘南エリアの中では少し毛色が違う、あまり目立たないけど落ち着いた街ってイメージでした。そういう意味では葉山と似ている印象です。最近では吉田茂邸が復元され、大磯市もかなりの賑わいで、個人的には注目している街の一つです。

 

 

今回はそのようなイベントや観光スポットには立ち寄らず素の大磯を見ようと思いました。ちょうどお昼についたのでまずは腹拵えということで日日食堂。

 

 

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古民家をリノベーション、料理も地の物を使っている感じも今どきですが、とても美味しかったです。また隣のギャラリーでは展覧会やワークショップ、ライブも行われているよし。街の公民館的スペースって感じです。こんなお店近くにあったらうれしいです。

 

次に...と思ったら連休中でお休みが多く住宅街をぶらり。

海に着きました。

 

 

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辻堂の海を見ながら育った私は、まず江ノ島が遠い...と思いましたが海岸は広く辻堂や鵠沼より綺麗な印象です。

 

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そして駅に戻り、駅から線路に沿って西に向かうと、駅の近くにカフェかパン屋さんが集まっているエリアがあります。

昭和感漂う路地がとてもいい感じです。

 

今回は時間がなかったのでチラ見しただけですが居心地の良い空間でした。

 

今度来るときは吉田邸含め別の側面の大磯を見に来ようと思います。

 

 

MOA美術館

随分前のように思えますが、連休最終日に熱海のMOA美術館に行ってきました。杉本博司による改修が行われて、美術館という制約の多い空間でどれくらい「杉本好み」が出来ているのかとても楽しみにしていました。

 

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エントランスロビー

 

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展示室までのアプローチ

 

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展示ケース

 

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ショップ

 

ディテールや素材の使い方はやはり上手いしお金かかってますね。特にケースのガラスが高透過なのは当たり前、さらに低反射仕様になっていてより作品に没入出来ます。ケース内部も畳みだったり、檜だったり、瓦の四半敷きと様々。重文も入るケースだから文化庁との協議大変そうですがどうだったんでしょうか。


空間全体としての印象はこれまでの杉本建築と比べて一歩引いているというか、作家性を抑えている印象です。早く江の浦測候所行きたい。

 

今回は岩佐又兵衛展ということもあり、杉本空間との相性は良さそうでしたが、別の、現代美術系の展覧会の場合どう変わるのか見たいです。

 

 

 

鎌倉歴史文化交流館

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鎌倉歴史文化交流館を見てきました。
昨年にオープンした博物館です。展示設計はT社さん。建築の設計はノーマンフォスター卿、工事は大林組。元々はセンチュリー財団所有の建物で2004年竣工の建物。外も内も石、石、石...

 

竣工時の写真はノーマンフォスターwebサイトから見ることができます。

 

しかも石自体が間接照明になってます。。。数年後、隈さんも同じことしていたような。

 

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随分贅沢な作りです。会社の迎賓館的な作りですね。

展示内容としては古代から現代の鎌倉までを俯瞰できる内容で、発掘品やレプリカの文書を展示してます。

 

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歴史に興味ない方は辛いかも。そんな方にはプロジェクションマッピングの解説がわかりやすいです。

 

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むしろここの博物館は展示室から本物の遺跡を見れることが目玉でしょう。もともとは無量寺というお寺があり廃寺になった後、刀鍛冶の正宗の屋敷、そして明治には岩崎弥太郎の別荘と歴史を重ねてきた場所です。様々な時代をへてやぐらという遺跡はありつつも私には庭のようにも見え鎌倉石と石畳と緑が調和して素晴らしいランドスケープを作り出しているように思えました。

 

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また谷戸の中で緑に囲まれているので静かでのんびり出来ます。

入館料も300円と安い!(最近の展覧会の入館料インフレどうにかして欲しい...)

鎌倉駅からも近くおすすめの場所です。

 

常楽寺 リサーチ2

常楽寺を引き続きリサーチしてます。
建築的にいくつかチェックしたいポイントがあるのですが、
一番気になったのは床です。
一般的にお寺の床は大体
・土間(三和土)
・瓦
・石
が多く、常楽寺も外部の軒下は土間※一部石


内部は石敷となっています。
もう少し詳しくみていくと
内部は四角形のグレーの石と角がとれた白っぽいグレーの石が手前と奥で分かれています。

 

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調べたところ、元々はすべて鎌倉石敷きだったようです。平成の修理にあたり状態が悪いため手前側は小松石に変更し、奥は元の鎌倉石を少し掃除して敷き直したそうです。
以前の鎌倉石敷きの方が古刹感がして好みですが、いかんせん鎌倉石はもろいので致し方ないでしょう。そしてもう一つ気になるのが外部の一部石敷きの部分。これは何の石でしょうか。

 

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触るともろそうなので鎌倉石だと
思うのですが、色が着~赤っぽくてあまり見たことがないのです。砂岩系だとは思います。

もう少しリサーチが必要ですね。