設計事務所への断り方 ②

前回に引き続き、断られたお話しでこのプロジェクトの特殊さについて話してみようと思います。

まず今回の敷地は全国的にも有名な寺社仏閣のすぐ近くで元々は境内だった場所と考えられています。つまり埋蔵文化や、周辺環境への景観的配慮が求められるため新築には文化庁の許可が必要でした。ということは土地を買った後に文化庁への許可手続きを行い、NOと言われた場合には既にある古家をリノベするしかないのです。

 

それを避けるために文化庁への許可手続きをして欲しいと施主Aさんからも不動産屋さんからもお願いされました。その手続きのためには提案したプランに追加で断面図、立面図、基礎伏図、申請書の書類が求められます。施主さんからは言われませんでしたが不動産屋さんからはサービスでお願いしたいと言われ、そのころには施主さんとメールのやり取りだけでなく電話で相談する仲になり親密さを感じていたので引き受け、一週間かけて図面を作成、提出しました。

 

その後、文化庁への申請を出して二週間くらい経った時に施主から電話があり、『敷地を買おうとする別の方が出てきた。文化庁への許可を待たずにひとまず買付(購入申し込み)をしたい』という電話がありました。続けて、『今回の敷地は風致や崖地に隣接しているので式面積の中でも立てられない面積が多い。その面積を拾い出していくら値引きできるか考えてもらえないか』とも仰られました。

CAD上で面積を図り、周辺坪単価からすると〇〇円に該当するのではと回答し、実際にいくらで買付を入れられたのかは知りませんが、不動産屋さんからも買付があったと連絡を頂きました。しかし別の方も買付をしたと連絡があり、土地の売主さんがどちらに土地を売るか検討する事態になりました。

 

買付の結果待ちながら、文化庁からの質疑に回答しつつ申請から3週間ほどで内諾という形で許可を得、さらに数日経った頃Aさんから運命の電話が鳴ったのです。

 

(③完結編につづく)

設計事務所への断り方 ①

なかなか衝撃的なタイトルの記事...苦笑

もう一年近く前のことですので時効かと思ってお話しするのですが、

懇意にしている不動産屋さんから仲介予定の土地に新築を検討しているクライアント候補Aさんを紹介されました。

結果的にはお断りされてしまったのですが、ひょっとしたら住宅をお考えの方で設計事務所、デザイン事務所にデザイン提案を依頼したが、様々な事情から断りたいと思っている方に参考になるかもしれませんので、その顛末を書いてみたいと思います。上手な断り方として参考になれば...笑

 

 

まずは知り合いの不動産屋さんから紹介をされたことがスタートだったのは前述の通りです。私達は下記のような流れで提案します。

 

1.事前調査

施主Aさんにお会いする前に候補地土地を見学。法規チェック、1年を通しての風の流れや採光など環境情報を確認。

 

2.顔合せとヒアリング

初回打ち合わせでご挨拶と要望の確認。

 

3.初回提案

Aさんにはというより今回の敷地に問題があり時間が無いから一週間で提案してほしいと言われました。時間が無いので内容が詰め切れないのは理解している、ひとまずは敷地に要望が入るか確認したいくらいの提案で良いとのことで、こちらとしては今回は提案するが問題が解決したらちゃんとした提案をしたいとお伝えし初回提案を行うことになりました。正直初回提案までにヒアリング後、最低二週間は頂いているのでかなりきつかったのですが、2案作って持参。案は気に入ってもらいました。

 

とここまでは提案までの日数が短いくらいでそれ以外は通常の流れで進んでいきました。ここからが特殊なのですが、この続きはまた明後日くらいに...

 

新年初投稿と久しぶりの投稿と案件紹介

明けましておめでとうございます。
今年こそ、定期的に本ブログを更新しようと年初に決意。

さて、新年最初は昨年できた物件の紹介から。


NARUTO COFFEE@和泉多摩川

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竣工写真はまだなのですがお店のコンセプトや特徴をイラストにまとめてみました。

小田急沿線にお住まいの方、お近くにお越しの際は是非立ち寄られて下さい。美味しいコーヒーとマフィンが頂けます。

 

 

湘南エリアで住むならどこ?!

自邸購入にあたりその顛末を記事にしようと思いながら、ずいぶんと時間がたってしまいました。本当に不幸なこと、予想外のこと等いろいろ起きたので書く気力がなくなったのですが、時間の経過とともに傷も癒え、そろそろ筆をとろうと思います。

 

今回はまず、我が家がこれから住む『エリア』についてどう選んだかについて書こうと思います。

引っ越して2~3か月でコロナ禍、その中で不動産をめぐる状況もずいぶん変わったように思えますが、我々のケースは川崎市から郊外の藤沢の海近エリアに引っ越しという、はからずもコロナ禍の住宅事情を先取りしてしまった形になりました。※川崎市都心部というかは微妙ではありますが、東京に近いという意味で都心という定義です。。。

ですので都心から郊外へ移住をお考えの方には参考になるのではないかと思います。

 

さて、前置きはこれくらいにして、いくつか前提をご説明しますと...

①本記事のタイトルにありますように『湘南エリア...』と書いてますが、住む場所としては湘南エリアが前提でした。これは私の実家が藤沢で子育てにあたって両親のサポートが必要なこと、仕事の都合上静岡方面に行くことが多いこと、さらに少しでも自然豊かな場所で暮らしたいことや、歩いていて風景がきれいだったり歴史を感じられる場所、街の人が自分の街に誇りを持っているような場所に住みたいと思うと湘南エリアが適当でした。

②戸建てかマンションか...永遠の悩みですが、職業上戸建てもしくが戸建てリノベーションが希望でしたが、そこまで強いこだわりはなくマンションも一緒に検討してました。エリアと価格、下記4条件でバランスをみて不動産を探していたように思えます。

 

そしてその湘南エリアと一口に申しましてもとても広く、まず結論からお話すると私達家族が選んだのは......藤沢市になりました。

では、なぜ藤沢にしたのか。

それは前述の通り私の実家があるからというのも大きな要因ですが、

以下の4点の視点で選びました。

  1. 海の近くに住みたい←まずこれ重要!
  2. 安全な場所であること→津波が来ない
  3. 費用を抑えたい
  4. 都心にも出やすい環境

そして下に湘南エリアの地図もすでにご存じかと思う方も多いと思いますが念のため。。。

 

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さて、それでは詳しく書こうと思います。

 

①『海の近く』

そのままといえばそのままなのですが、湘南というエリアを(かなり)広くとらえるならば横須賀の秋谷くらいから小田原くらい=ほぼ相模湾ですね!とするとかなりの場所が候補地になります。一口に海といっても秋谷~葉山~逗子は砂浜もあり岩場も多く磯遊びも可能。逗子は波も穏やかで将来的にやってみたいSAPにも適してそう。鎌倉も稲村ケ崎など岩場はあるものの、江の島~小田原まではほぼ砂浜。我が家は海が近くにあればいいというくらいで、どう海と関わるかはこだわりはなく、しいていえば海まで徒歩で10分以内にいける距離がいいな、それくらいなら海の近くに住んでます!と言えるかなと思ってました。

 

②安全な場所=津波が来ない

これはかなり重要でした。実際我が家は逗子、鎌倉、藤沢、少しジャンプして大磯で検討してましたが、逗子、鎌倉の海近エリアは津波が来る。

もちろん山側であれば問題ないのですが…それはそれで別の問題―がけ崩れが気になりました。昨年も逗子でがけ崩れで女子高生が亡くなるという悲しい事故がありました。鎌倉逗子は擁壁のない崖も多いのです。見に行った家もブロック塀が擁壁を兼ねており何かあった時のことを考えると汗が出ます...

かといって平野部は津波が来るし、そもそも鎌倉や逗子は平野部は土地が高いく、山側は敷地の擁壁を建てたり、建築する前の段階で費用がかかりすぎる...

また、鎌倉や逗子でマンションの高層階に居を構えたとしても通勤通学中に津波に合う可能性もあるため結果的に無しの方向性に気持ちが傾いていきました。

一方藤沢は片瀬エリアや川沿いは多少津波が来るものの、鎌倉や逗子ほどではなく、大磯も高台に駅や小学校があり安心でした。

その結果、藤沢ならば鵠沼海岸~辻堂東・西海岸、大磯ならば東小磯あたりを視野にいれはじめました。

 

参考までに各エリアのハザードマップのリンクを貼っておきます。

逗子

鎌倉

藤沢

大磯

 

③費用を抑えたい

土地やマンションの価格からいえば一般的には都心から遠くなればなるほど、そして駅から離れるほど下がります。

ただし、湘南エリア全般に言えると思うのですが、海に近い物件も高いという基準が存在します!駅と海の中間にある場所もいいとこどりをしたい方に人気のため高いのです。

つまり全部高いのです!

さんざん不動産チラシを見てきて我が家の予算では下記が下記が候補となりました。

 

逗子→久木・小坪

鎌倉→大町、材木座※逗子寄り…というかほとんど逗子側、もしくは海をあきらめて北鎌倉の台という地区。

藤沢→鵠沼海岸辻堂海岸

大磯→東小磯 

 

 ④都心にも出やすい環境

都心に出やすいという意味では大磯は却下となるところですが、通勤で座っていけるのはとても魅力的でした。

(しかし、東京から帰るときはたまに平塚止まりの電車が存在するため、平塚で降ろされる度にイライラするだろうなあと...)

しかし座れるという点では横須賀線で逗子発の電車もあり魅力的です。京急もありますしね。

また大磯の方が土地の値段が安いため駅近物件を購入できるのもポイントが高いです。逗子だと駅近物件は高めなのと津波が来ますし、小坪は鎌倉か逗子からバスでないとちょっと厳しい距離。駅までの徒歩や自転車での時間を考えると大磯も案外悪くありません。

藤沢もJRと小田急がありますし、湘南台にいけば相鉄も地下鉄もある。

そういう意味からするとバランスをとって藤沢、もしくは大磯が良いのかなと思いました。

 

 

 

以上をまとめると、①と③は全エリアが、②は藤沢、④は藤沢と大磯が有利ということで結果的にその通りになりました。

また湘南エリアでは子育て支援が藤沢が一番充実してそうなこと、また市の財政も湘南エリアでは一番良いことも決定材料になったと思います。

 

次回は藤沢エリアの細かいエリアの特徴とか住み心地を記事にしようと考え中です。

 

作品更新しました

昨年末から進めていた世田谷区のマンションリノベーションをホームページにアップしました。全体的には静謐なリッチさを感じる空間になったと思います。

詳細は下記リンクをご覧下さい。

 

WHITE | Hütte Design | 藤沢・鎌倉・静岡の建築設計事務所

 

 

自邸の購入

随分とご無沙汰をしておりましたが,そして突然ですが家(マンション)を買うことになりました。購入するのは築52年のマンション!

 

決めるまでにかなりの時間がかかりました。

設計者である以上、マンションリノベより新築や戸建のリノベが良い一方で子供の学区や通勤も考えると立地のいい敷地なんて高くマンションになる...そんな何を優先すべきかという葛藤から家族や両親からのアドバイスや文句、本当に築50年以上のマンションを購入して良いのかなど様々な困難がありました。しかしやっと契約までおこない、決断に至るまでに至った顛末記とリノベーションもしますので工事の様子を記事にしていこうと思います。

 

まず次回は物件について書こうと思います。

白旗神社

次回の古建築ガイドで取り上げる白旗神社を調べています。先日、修理報告書を見ていたら、拝殿と呼ばれる部屋の柱がスチール製ということがわかりました。江戸時代に既に木と鉄の混構造を行なっていたとは...

 

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それにしてもどう作ったんでしょうね。相模国は鋳物や刀鍛冶が盛んだったようなので案外難しくなかったのかもしれません。あとなぜスチール柱にしたのかも気になります。

 

はじめてこの建築を見た時にどこか現代建築に通じるモダンやシャープさを感じたのですが、この柱のせいかもしれません。色々調べることが出てきました。また図書館通わないと...